不正リスクマネジメントの基本コンセプト

今日の我が国企業のコンプライアンスにおいては、法令遵守というだけでなく、広く社会(利害関係者)の「期待と信頼」に応えることが求められています。そして、その「期待と信頼」を裏切れば、コンプライアンス違反として社会的批判を受けることになります。会社資金の横領や粉飾決算といった企業不正は、コンプライアンス違反の最たるものであり、企業の存続を危うくすることさえあります。
米国の犯罪学者D.R.クレッシーの提唱した「不正のトライアングル」理論によれば、不正行為は、不正リスクの3要素(「機会」「動機」「正当化」)が全てそろった時に生起します。そこで、内部統制システムによって不正リスクの3要素のどれか1つでも抑止できれば、企業不正を抑止できることになります。
企業会計審議会が公表している内部統制の枠組みでは、内部統制システムは、4つの目的を達成するための6つの基本的要素から構成されます。この6つの基本的要素を適切に整備・運用することにより、職場に潜む不正リスクを抑止できると考えられます。
①「機会」の抑止
「機会」とは、不正行為をやろうと思えばいつでもできるような職場環境のことです。そこで、内部統制システムを適切に整備・運用して、不正行為をやろうと思ってもできない職場環境を構築することで「機会」を抑止できると考えられます。もっとも、そのような職場環境を構築するためには、内部統制システムの6つの基本的要素を一体的に機能させる必要があります。
②「動機」の抑止
「動機」とは、不正行為を実行するしかないと考えている心情のことです。そこで、統制環境を整備し、不正行為を実行しようとする意欲を低下させて「動機」を抑止するといった方策が考えられます。
③「正当化」の抑止
「正当化」とは、自分に都合の良い理由をこじつけて、不正行為を行う時に感じる「良心の呵責」を乗り越えることです。そこで、統制環境を整備し、「良心」のハードルを高くすることで「正当化」を抑止するといった方策が考えられます。


