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『ストレスチェックの評価・分析 ~職業性ストレス簡易調査票(57項目)を用いた場合~』

はじめに

これまで、ストレスチェックが必要となった経緯、その概要、そしてストレスチェックの質問内容についてお話しました。今回は、ストレスチェックの職業性ストレス簡易調査票(57項目)を用いた際の評価と分析についてお話します。

ストレスチェックの評価・分析の概要

前回、ストレスチェック調査票の内容についてお話しましたが、その評価・分析は、受検者個人に対するものと、受検者が属する集団に対するものがあります。前者には、それぞれの問題の意図ごとに点数化して行う評価・分析と、高ストレス者の割り出しを目的とした評価・分析が含まれます。

集団の分析は現時点では努力義務ですが、これを行うことによって集計単位ごとのストレス状況が把握できるようになり、事業者が職場環境を改善する際に有用であると考えられています。

個人的な評価・分析について

個人的な評価分析は、ストレスチェックの質問に挙げられている3つのグループ、(A)「ストレスの原因と考えられる因子」、(B)「ストレスによっておこる心身の反応」、(C)「ストレス反応に影響を与える他の因子」それぞれに属する質問への回答の評価と、グループごとの合計点による高ストレス状態判定評価の二つを行います。グループについての素点換算表について表を示します。この換算表には、性別による回答率の違いも記載されています。

素点換算表
表1:素点換算表(職業性ストレス簡易調査票57項目を用いる場合)[1]

個人的な評価分析は、(A)~(C)それぞれのグループにおける尺度ごとの点数をレーダーチャートや表にすることが推奨されています。これらによって各グループに挙げられている個人的な問題点をあぶり出すことができるからです。そしてこれらの結果を基にして、受検者個々に対する「ストレスプロフィール」と題したコメントを作成することが望ましいとされています。

一方で、実施者の立場からすれば、高ストレス者に対する面接申出の勧奨と希望者に対する面接指導の手配を行う必要があるため、受検者への結果通知は、グループごとの点数とストレスに対する簡単なセルフケアのアドバイス程度に留め、面接指導の要否、通知を主体とする報告でもよいと言われています。これらを踏まえれば、実際には職種や事業所の規模、性差によって工夫されるべきものであると考えます。

高ストレス者を選定する方法には、次に示す二つが存在しますが、基本的な考え方は両方とも同じです。すなわち、①グループ(B)「ストレスによっておこる心身の反応」に関する項目の評価点が高い者、②グループ(B)「ストレスによっておこる心身の反応」に関する項目の評価点の合計が一定以上であり、かつ、グループ(A)「ストレスの原因となりうる因子」とグループ(C)「ストレス反応に影響を与える他の因子」に関する項目の評価点の合計が著しく高い者、いずれかに該当する者を高ストレス者と選定します。その二つの方法について具体的に説明します。

簡易調査票における高ストレス者設定の概念図
図1:職業性ストレスチェック簡易調査票(57項目)における高ストレス者設定の概念図[2]

まずは、ストレスチェックにおける質問事項をすべて点数化(1~4点に)して、グループ(B)「ストレスによっておこる心身の反応」を縦軸に、グループ(A)「ストレスの原因と考えられる因子」とグループ(C)「ストレス反応に影響を与える他の因子」の合計を横軸にして評価します。グループ(B)の評価点が77点以上である群<基本的な考え方の①に該当>とグループ(B)が63点以上で、かつ、グループ(A)とグループ(C)の合計が76点以上である群<基本的な考え方の②に該当>を高ストレス群とする方法です。

もう一つの方法は、前掲の素点換算表(表1)を用いたものです。グループ(B)「ストレスによっておこる心身の反応」における6尺度(活気・いらいら感・不安感・抑うつ感・疲労感・身体愁訴)について1~5点の評価点をつけます。それらの合計が12点以下<基本的な考え方の①に該当>である群を高ストレス群とします。そして、グループ(B)「ストレスによっておこる心身の反応」における6尺度が17点以下で、かつ、グループ(A)「ストレスの原因と考えられる因子」の9尺度(仕事の量、仕事の質、身体的負担、など)とグループ(C)「ストレス反応に影響を与える他の因子」の3尺度(上司からのサポート、同僚からのサポート、など)の計12尺度を素点換算表から5段階に分けて点数化し、その合計が26点以下である群<基本的考え方の②に該当>を高ストレス群とする方法です。

どちらの評価法でも高ストレス群は全体の10%程度と言われています。高ストレス群に含まれる受検者は、面接指導の対象になることからも重要な評価法です。しかしながら、あくまでも受検者個人の評価分析が最も重要であり、高ストレス群に含まれない受検者でも本人の希望に拘わらず、必要があれば面接指導を行うという立場で臨む必要があると考えます。具体的には職種によって心身ストレス反応の6尺度のうちの数項目を重要項目に据えて前述の高ストレス群の評価法と併せて判断するなど、職種や職場環境によってそれぞれ考慮されるべきものと考えます。

集団の評価分析について

集団の評価分析を行う意義は、高ストレス状態にある部署を明らかにすることで職場環境の改善に結びつけることにあります。また、個人の特定ができない分析であれば受検者の同意を取らなくても実施者から事業者へ提供しても構わないと言われています。しかしながら、10人以下の集団が含まれる分析については、個人が特定されるおそれがあることから、受検者の同意がないかぎり実施者から事業者への提供は禁止されています。また、集団の評価分析にあたっては経年的な評価も必要なため、事業者は5年程度の保管が望ましいとされています。

次に集団の評価分析方法を「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」と「仕事のストレス判定図」用いた場合を例にしてご説明します。

仕事のストレス判定図の使用方法
図2:仕事のストレス判定図の使用方法[3]

「仕事のストレス判定図」は「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」の質問から構成される二つの図(「仕事の量的負担-仕事のコントロール」判定図と「上司の支援-同僚の支援」判定図)から成り立っています。「仕事の量的負担-仕事のコントロール」判定図とは、グループ(A)「ストレスの原因と考えられる因子」の「心理的な仕事の負担(量):質問項目番号1~3」の得点を横軸に、「仕事のコントロール度:質問項目番号8~10」の得点を縦軸にしたもので、図に斜線として表示されている基準ポイントを基に、その職場や集団がどこに位置するのかを、受検者の平均値を計算して図内にプロットして評価します(この数値を健康リスク[a]とします)。「上司の支援-同僚の支援」判定図とは、グループ(C)「ストレス反応に影響を与える他の因子」の質問において、横軸を「上司からのサポート:質問項目番号1,4,7」の得点、縦軸を「同僚からのサポート:質問項目番号2,5,8」の得点として同様に評価します(これを健康リスク[b]とします)。両者の数値を総合した健康リスクを [a]×[b]÷100 で計算します。

この健康リスクは100が基準なので、120以上となった場合(基準より20%以上高い場合)には、何らかのストレス問題が職場で生じていると判定し、さらなる細かい分析を行いながら、職場環境の改善を計画する必要があると言われています。

評価分析された集団の責任者にとっては、この結果が当該事業所内における自身の評価にもつながることにもなり、場合によっては不利益を被ることにもなるのでその点については配慮が必要です。このため、集団の評価分析の事業所内における取り扱いについては、事業所における衛生委員会などであらかじめ十分審議することが重要であるとされています。

 

「職業性ストレス簡易調査票」と「仕事のストレス判定図」についての詳細は、東京医科大学公衆衛生学分野ホームページ( http://www.tmu-ph.ac/topics/stress_table.php )、または、東京大学事業場のメンタルヘルスサポートページ( http://mental.m.u-tokyo.ac.jp/jstress/ )に記載されています。

 

以上、ストレスチェックの評価分析についてお話いたしました。

(田浦内科クリニック 院長 杉山 厚)


[1] 「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(平成28年4月改訂)」p.40 より引用

[2] 「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(平成28年4月改訂)」p.43 を基に作成

[3] 「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(平成28年4月改訂)」p.87 より引用

・「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(平成28年4月改訂)」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150507-1.pdf

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