警察庁発表の暴力団情勢の報告
今月1日「平成28年上半期における暴力団情勢」[1] が警察庁組織犯罪対策部より発表されました。
主要団体(暴力団)の動向から警察を含む行政、各種団体の暴力団(反社勢力)への取り組みまでを報告しています。いくつかポイントを説明いたします。
まずは「暴力団犯罪の検挙状況」を見てみると、暴力団構成員(準構成員および周辺者を除く)の検挙人員の推移では総計が2,244人であり、前年同期比でマイナス14人。平成24年からみても右肩下がりの傾向にあります。しかし同じ調査で、暴力団構成員だけでなく準構成員その他の周辺者を含めると、検挙人員は9,426人と暴力団構成員のみの4倍以上となります。
暴力団構成員との直接の関係を結ばないように注意していれば大丈夫、というわけにはいかないようです。何かトラブルの芽のすぐ後ろに構成員がいるかもしれません。
また、罪種別検挙件数で特に目立つのは暴行・傷害と覚せい剤ですが、詐欺や文書偽造、脅迫などは“構成員のみの犯罪”より“準構成員及び周辺者を含んだ”件数の方が割合として高くなります。準構成員及び周辺者からこれらの犯罪行為が一般企業に対して広く行われているかと思います。
次に暴力団の資金獲得犯罪を見てみると、最初に「組織的犯罪処罰法(マネー・ローンダリング関係)の適用状況」を説明し、「伝統的資金獲得犯罪」(所謂“しのぎ”等)、および建設業や労働者派遣業のピンはねや風俗営業等の「企業活動を利用した資金獲得犯罪」と続いて説明しています。いずれも前年に比べ検挙件数が減っていることを報告しています。しかし、報告は検挙件数のみですので、どれだけの資金の元を絶ったのか、そもそも犯罪行為全体が減っているのかがわからないのは残念です。
検挙人員数では圧倒的に「伝統的資金獲得犯罪」が多いのですが、説明の順番から摘発の主軸がマネー・ローンダリングに移っていることは想像できます。企業の社会的責任として、暴力団の資金獲得(あるいは資金洗浄)の片棒を担がないように最大限の注意を払うことがますます大事になっています。(反社勢力との関係が明らかになった場合のペナルティも年々増大しております。)
最後に暴力団排除についての自治体等行政の取り組み、警察の(民間等への)支援についての情報や活動を説明しています。これらには勇気づけられますが、“支援”ですので、やはり私たちひとりひとりが暴力団等の反社会的勢力に対し屈しないという心構えをもち、企業としては自衛のための取り組みを行っていく必要があります。
具体的には、取引先等の十分なチェックや社内のおかしな金の流れの洗い出しなどから始めることです。
(若原)
[1]「平成28年上半期における暴力団情勢」(警察庁組織犯罪対策部)
https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/bouryokudan/boutai18/h28kami_jousei.pdf
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