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Governance Q【磯山友幸×八田進二#2】トップ万能主義が「ガバナンス」を蝕む
2023.11.30経済ジャーナリストの磯山友幸氏と八田進二・青山学院大学名誉教授による対談の後編のテーマは、日本企業のガバナンス強化の実効性と学校法人のガバナンス問題。とりわけ、大学に代表される学校法人運営の在り方について、千葉商科大学教授も務める磯山氏は警鐘を鳴らす。
ガバナンス「仏作って魂入れず」の企業も
八田進二 (#1から続く)ガバナンスというと、どうしても仕組みについての議論が中心になります。そこで出てくるのが、日本型の監査役制度は国際標準ではないという指摘です。そして、指名委員会等設置会社で執行と監督を分離させる流れが出てくるわけですが、上場企業4000社弱のうち、指名委員会等設置会社に移行しているのは100社にも届かない。上場企業の機関設計をどのように見ていますか。
磯山友幸 指名委員会等設置会社にしたくないというのは、やはり、人事権を握っていないと自分が会社をコントロールできないと思っている経営者が圧倒的に多いからでしょう。本当はそんなことはなくて、きちんとガバナンスの仕組みさえ出来上がっていれば、自分の後任社長が誰になるかとは関係なしに経営者としての自分がきちんと評価されるはずです。
八田 一方で、日本企業の場合、形だけのガバナンス議論で満足してしまって、そこに魂が入っていないのではないかという懸念があります。結局、上場廃止になる東芝が指名委員会等設置会社であったことは有名な話ですね。
磯山 おっしゃる通りです。やはり、魂を入れることを覚悟した会社でないと制度は使いこなせません。特に日本みたいに指名委員会等設置会社以外にも、従来の監査役会設置会社、折衷型の監査等委員会設置会社と、何でも選べるみたいな制度があると、結局は緩いほうへと行ってしまう。だから、ガバナンスの制度議論は難しくて、制度をどのように使いこなすかは、その会社の姿勢によるところが一番大きいと思いますね。
2003年に当時の委員会等設置会社に移行した東芝のケースはアコギで、実力会長が外部の素人を委員にして、自分が指名委員長に就いた。そして、現役の社長が後継者を指名する慣例を破って、自分が任命権を握ってしまったのです。これが東芝のガバナンスがおかしくなった一番の原因でしょうね。
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