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Governance Q 第11回【久保利英明×八田進二#1】ガバナンスとド派手スーツの原点
2023.12.19八田進二・青山学院大学名誉教授が各界の注目人物と「ガバナンス」をテーマに縦横無尽に語り合う大型対談企画。シリーズ第11回目のゲストは、かの久保利英明弁護士である。企業法務の世界で知らぬ者はいない久保利氏だが、半世紀超に及ぶ弁護士活動は「日本企業のガバナンス史」そのものと言える。現在は、日本ガバナンス研究学会会長も務める久保利氏が考えるガバナンスの過去、現在、そして未来とは――。
八田進二 実は、私が法曹界で一番尊敬しているのが久保利先生。これは社交辞令ではなくて、独特のコスチュームとともに、まさに先生の生き方が好きなんです(笑)。2009年からは「一人一票等価値訴訟」弁護団を立ち上げて、一票の格差問題に取り組まれておられます。半世紀以上にわたり、弱者にも目を配りながら、より良い社会を作ろうと活動されていますが、先生が今のような考えを持つようになった、そもそもの根源は何ですか。
久保利英明 私が生まれたのは敗戦1年前の1944年8月です。あの頃は米軍の空襲が続き、子どもを産んでも死んで当たり前といった時代。だから、私たちは戦争に関わる問題を自分自身の問題として抱えている最後の世代です。
もうひとつ大きいのが、1967年に司法試験に現役合格した後、約半年間、アフリカ・インドなどを旅行したことですね。弁護士というのは危険な仕事だと思いましたから、命がけの経験をしておかないと、いざという時に踏ん張りが利かないと思ったので、意図的にそういう境遇に自分を追いやったわけです。そして、海外で一番危険なところはどこかと言えば、アフリカとインドだと。実際、本当に危ない目にあって、命からがら帰ってきました。そうなるともう、ヤクザ者が脅かそうと何をされようと、「あの時、捨てた命だから大丈夫だ」という感覚になる。乱暴な生き方であることは間違いないでしょうね。(笑)
八田 戦争体験者の多くは「同僚がみんな戦死した、たまたま運もあって自分は生き残ったから、今ある命は儲けものだ」と常々話されます。であれば、「その命を最大限に社会に還元したい」と。そうした考えに通じるものですよね。ところで、先生は現時点で何カ国を巡っておられるんですか。
久保利 171カ国です。残り20数カ国ありますけど、ほとんどが紛争国か渡航禁止国。あとは伝染病などで死体になって帰って来るような国でしょうか。知らない国に行って、知らない人とお付き合いしてみたい、何を考えているのか知りたいという強い好奇心が旅行の原動力ですね。
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