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GovernanceQ【冨山和彦×八田進二#3】”お飾り社外取締役”を選ぶ日本企業の「ガバナンス粉飾」
2023.11.15

JAL再生「利権構造」を会社更生法で一掃
八田進二 (#2から続く)冨山さんはJAL(日本航空)の再建にも関与されましたね。私は会社更生手続きが終結した2012年から8年間、JALの社外監査役を務めましたが、冨山さんはまさに更生法申請の前後ですよね?
冨山和彦 2010年1月の更生法申請までのところで関わりました。表舞台では前原誠司・国土交通大臣、裏舞台では財務省から声がかかってデューデリジェンスに入ったのが2009年の9月です。JALの経営がおかしくなったのは直接的には2008年9月のリーマンショックでビジネス需要が激減したことなんですが、病巣はそのずっと以前から抱えていて、よくもまあ、あれだけ長期間にわたって何もせず放っておいたもんだと思うような状況でした。
まずヒト、飛行機、路線のいずれもが3割多い。つまり、固定費が3割も多い。それと一番呆れたのは、2カ月後の2009年11月中旬に、資金繰りが本当に完全ショートするということでした。燃油も買えない、銀行に金利も払えない、税金も払えない。空港の離発着料も払えないから、海外に飛んだ飛行機が戻って来られなくなる。それでも、幹部たちはどうにかなると思っている。
八田 政府が何とかしてくれると?
冨山 そうです。これまでもなんだかんだ言っても、最後は何とかなったんだからと。でも、もうどうにもならないところまで来ていた。返済のメドが立たないカネなんて、どこの金融機関だって貸せるわけがない。とにかく11月12日までに資金を調達しなければいけない。そうしないと、飛行機を飛ばせられなくなる。そうなったら収入はゼロです。だから、航空会社の再建をする場合、飛行機は飛ばし続けないとダメなんです。サメやマグロが泳ぐのをやめたら死んじゃうみたいなもんです。スイス航空(2001年破綻)やパンナム(パンアメリカン航空、1991年破産)が再生不能になってしまったのは、飛行機を飛ばせられなくなったから。ああなったら終わりです。
しかも、当時はリーマンショックの直後だったんで、民間の資金の出し手が全くいなかった。じゃあどうしようかと。ちょうどリーマンショックで傷ついた中小企業を支援するというコンセプトで、官民共同出資のファンド、企業再生支援機構が発足したところでしたから、ここを頼ろうと。ただ、すぐに申請しても実際に資金が出るのは年明けだっていうので、それまでのつなぎのローンを調達しないといけない。そこで事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)を申請して、金融機関がブリッジローンを出しやすくしようというシナリオを国交省、財務省と描いていたんです。
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