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DQトピックス

 
内部統制

情報を把握して 伝える仕組みが リスクに強い 企業体質をつくる。

2019.08.09

内部統制の強化が経営者を守る

不祥事が起きる際に共通した問題点が2つあります。一つは経営トップの姿勢。これは外部からも内部からも変えにくい。そしてもう一つは情報が正しく生み出され、伝達される仕組みです。本来、組織の目標の達成を阻害する不利益なことがあれば一刻も早く摘み取らなければなりません。しかし、マイナス情報は伝わりにくい。現場が封印してしまって、結局、経営トップに伝わらないまま、不祥事という形で公になってしまいます。
記者会見などで「聞いていなかった」「知らなかった」という、経営トップの人のコメントをよく目にします。昔は「大きい組織だから仕方ない」という見方もありました。アメリカでもそうでした。しかし、エンロンやワールドコムの事件ではトップの責任が問われ、社会の見方も変わってきました。
トップは企業の頭脳であり、従業員は手足です。頭脳が手足の痛みや異常に気付くためには、神経が正常でなければなりません。それが内部統制という仕組みです。頭が手足の変化を知るための内部統制は、本当は頭である経営者を守る仕組みなのです。

勇気ある人たちを守る仕組みを

健全な企業経営のためには組織の“風通しの良さ”が重要です。それを実現するのが、有効な内部統制であり、円滑な情報チャネルを内部に備えることが必要です。組織の情報が適切な形で適切なところにタイムリーに伝わる不正監視の仕組みはその構成要素の一つです。
今では上場企業の多くが不正監視などの内部統制の仕組みを持っています。確かに要所要所では機能し始めています。東芝やオリンパスのケースだけでなく、内部通報によって上場企業の決算発表が延びるといったケースが増えているのはその証でしょう。
背景にあるのは、そうすることが中長期的に見て自分たちの組織を守ることにつながるということを自覚し始めたことと、組織構成員の正義感や倫理観が芽生えてきたからです。だからこそ企業としてそういう意識の高い人たちを活用し、守る仕組みをきちんと整備しなければなりません。
ただ、多くの場合、内部通報のホットラインや窓口の運営をしているのは同じ組織の人たちです。これでは通報した人を異分子とみなしたり、裏切り者扱いしたりしがちです。決して通報者の立場を守ってはくれません。
だから外部に通報することになる。内部告発です。しかし、告発した際に「よくやった」と言われたとしても、長い目で見て不幸なことになったりすることも多く、その結果、内部通報に対してネガティブな人が増えてしまいます。
企業や内部通報の窓口が通報者の勇気を称えようとしていないことや、なぜ外部に発信するのかを理解できていないことが原因です。

内部統制を構成する6つの基本的要素

今の若い人たちは正義感や倫理観、あるいはマナーといったセンスを自然に身につけています。それを企業として活用するには、情報を共有する仕組みが大切です。上場企業であれば、内部通報の窓口を持っていて、公正に運用できる仕組みは必須です。
内部統制を構築するための基本的要素は6つあります。統制に対する意識に影響を与える「統制環境」、組織目標の達成の阻害要因を評価分析する「リスクの評価と対応」、経営者の指示を実行する「統制活動」、必要な情報を正しく相手に伝える「情報と伝達」、内部統制の有効性を評価する「モニタリング」、そして今日の業務を支える「ITへの対応」です。中でも大事になるのが「統制環境」と「情報と伝達」です。「統制環境」は組織の気風を決定し、組織内すべての人の統制に対する意識に影響を与え、他の基本的要素にも大きな影響を及ぼします。
また「情報と伝達」が弱ければ、必要な情報を識別して組織内外および関係者に正しく伝えることができません。
特に大事になるのが、継続的なモニタリングです。現状に慣れてしまうことで茹でガエルになるのが一番危険です。人間はマンネリに陥りやすいし、気が緩むし、鈍感になりがちです。だからこそ定期的に見直してフォローアップする必要があります。

悪い情報をプラスに活用する

これから10年で世の中は大きく変わってきます。経営トップが裸の王様でいい時代ではありません。今尊敬されているトップは、現場を大事にしています。現場の意識や行動を知ることが大事です。帳簿やデータを見るだけではダメです。
企業にとって一番のリスクは経営トップが現場を把握できていないこと。重役室が最上階にあるようではダメです。勘違いしてはならないのは、リスクがあること自体が悪いわけではないということです。リスクをとってこそリターンがあるんです。
どの企業もリスクをゼロにすることはできません。だからこそリスクと向き合い、保険をかけるという自主性が大事になります。これは経営トップの仕事。下の人にはできません。内部統制の責任者は経営トップであり、
内部統制の管理運用は経営そのものなのです。
一番重要なのは悪い情報が出てきたときに、経営トップがどう対応するかです。臭いものに蓋をするのではなく、事態を正確に把握し、原因を究明することです。悪い情報は教訓としてプラスの方向に活かしていかなければ意味はありません。
しかし、残念なことに内部統制の形を整えても魂が入っていないケースが多い。仕組みを作っても、魂を入れて運用しなければ成果にはつながりません。内部統制は漢方薬のようなもの。即効性はありません。時間をかけて企業を筋肉質に変え、持続可能な経営を可能にするものなのです。

博士 (プロフェッショナル会計学)、公認不正検査士(CFE)
日本公認不正検査士協会 評議員会 会長
八田 進二
はった しんじ

青山学院大学大学院 会計プロフェッション研究科 教授を経て、青山学院大学 名誉教授。大原大学院大学 会計研究科 教授。日本監査研究学会 会長、日本内部統制研究学会 会長、会計大学院協会 理事長、金融庁 企業会計審議会 委員 (内部統制部会 部会長) 等を歴任。

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