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コーポレートガバナンス

GovernanceQ 【久保利英明×八田進二#3】この国のガバナンスは大丈夫か!?

2023.12.20

八田進二・青山学院大学名誉教授が各界の注目人物と「ガバナンス」をテーマに縦横無尽に語り合う大型対談企画。シリーズ第11回目のゲストは、かの久保利英明弁護士。最終回の#3では、易きに流れる上場企業の機関設計問題、弁護士のビジネスに堕しつつある第三者委員会の問題点、そして、この国のガバナンスの在り様へと広がっていく――。

監査等委員会設置会社では「不祥事を防げない」


八田進二 #2から続く今、こうしてガバナンスをめぐるお話を伺っているわけですが、日本でもガバナンスの問題が周知されるきっかけとなったのは、2015年の「コーポレートガバナンス・コード」の制定です。この流れを作った一人が久保利先生ですよね?

久保利英明 それには前段階があって、2012年に法務省の法制審議会会社法制部会で「会社法制の見直しに関する要綱案」をまとめました。その中で社外取締役の選任の義務付けを盛り込みましたが、経団連の強い反対を受けて実現できなかった。法律として盛り込めないのであれば、ソフトローで盛り込めばいいと提案したのです。あとは「コンプライ・オア・エクスプレイン」(遵守せよ、さもなくば、説明せよ)でやればいいと。心ある企業が取り入れれば、その他がついてくるという発想です。日本お得意の社会における同調圧力の利用です。実際、ソニーをはじめ、一部の大手企業は指名委員会等設置会社に移行していきました。

八田 しかし、指名委員会等設置会社は現時点でも100社に満たないという状況です。現在、日本の上場企業には指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社、そして従来通りの監査役会設置会社の3つの機関設計があります。私は、法制度は“シンプル・イズ・ベスト”だと思っていて、ひとつの仕組みだけを作って、後の運用と活用は企業各社に任せる方法がいいのではないかという立場です。

にもかかわらず、2015年5月の改正会社法で指名委設置と監査役会設置の折衷案というべき監査等委員会設置会社が新設された。指名・報酬委員会を必置にしなくてもいいという与し易さもあって、今では上場企業の3分の1強が監査等委員会設置会社に移行しました。こういった流れはどう評価をされますか。

久保利 多数が採用しているから良い制度だと勘違いしている企業が多いですよね。まず指名委員会等設置会社で言えば、当初、1名以上、つまり2名の社外取締役がやりたいことをやったら、ガバナンスが壊れるということで、企業側はみんな、反対したわけです。ところが、今は社外取締役が1/3以上いたり、過半数の会社も増えてきました。仮に2名の社外取締役が掻き回そうにも、そんなことはできない。だから、指名委員会等設置会社に移行する企業もあるわけです。

一方の監査等委員会設置会社で言うと、コーポレートガバナンス・コードで定められた社外取締役を確保するためには社外監査役を取締役にしないと達成できないという言い分でした。ただ、極端に言うと、そんな主張をしていた企業は規模からしても、上場している必要性がないような企業が多かった。本当に立派な会社で監査等委員会設置を採用している企業は、数える程しかないんじゃないかと思いますよ。

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