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内部通報

パワハラ措置義務化まで残り時間はあとわずか。専門家が語る「ハラスメント対応における内部通報制度の有効性について」

2019.11.22

    ※この記事は2019年11月22日に公開されました
    職場におけるパワー ハラスメントを防止するための取り組み (パワハラ措置) が、大企業は 2020 年 6 月から、中小企業は 2022 年 4 月から、それぞれ義務付けられます。(根拠法:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 (厚生労働省))

    2019 年 11 月 20 日には、パワー ハラスメントの該非を具体的に定めた指針案の大筋が、厚生労働省より諮問機関である労働政策審議会の分科会に示され了承されました。
    この指針は、年内に最終案がとりまとめられ、2020 年上旬に公表される予定です。

    パワハラ措置の義務化までに残された時間はわずかです。
    指針の公表時には、適切な対応を迅速に行えるように、事前の準備を済ませておきたいものです。

    今回は、ハラスメント対応における内部通報制度の有効性について、専門家である 辻 さちえ 先生にお話いただきました。

     

    辻 さちえ「内部通報制度は不正の芽を摘み取り社員が安心して働ける環境を作るもの」

    株式会社ビズサプリ
    代表取締役
    辻 さちえ
    つじ さちえ
    公認会計士、公認不正検査士 (CFE)

    公認会計士、公認不正検査士。1996年、監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)入所。会計監査業務を経て、内部統制関連のコンサルティング業務に従事。2015年に独立、株式会社エスプラス(現ビズサプリ)を設立し内部統制、内部監査、不正調査やコンプライアンス対応の支援サービス等を展開する他、企業不正の専門家として数多くの講演を実施。このほかに、一般社団法人日本公認不正検査士協会理事、新電元工業(株)および大塚ホールディングス(株)で社外監査役、SBSホールディング(株)で社外取締役(監査等委員)を務めている(2023年1月現在)。

    「屋台骨を揺るがすような事態を防ぐために」

    財務会計の分野で内部通報が行われるとすると、横領などの個人の犯罪の通報と、粉飾決算などの会社ぐるみ、組織ぐるみの不正会計の通報との二つの側面を持っています。特に内部通報の効果が期待されるのは、後者に対してですね。

    通常であれば上司に相談するところですが、言っていいものかどうか迷って、つい見て見ぬ振りをしてしまうこともあるはずです。それを長年放置していると、善悪の感覚が麻痺してきて、企業内で自ら不正をただす力が無くなります。不正が明るみになったときには、週刊誌などに取り上げられ、屋台骨を揺るがす大ごとになってしまいます。

    しかし、内部通報の仕組みがあれば、早い段階で問題の芽を摘み取ることができます。通報窓口が社外にあれば、さらに通報はしやすくなります。会計監査人が内部通報制度の導入を会社に提案するということもあるようですが、これは内部統制を評価する際に、マイナスの情報をタイムリーに集める仕組みの有無が問われているからです。

    「もう一つのコミュニケーション ルートとして」

    ハラスメントへの対応という面でも内部通報制度は有効です。ハラスメントには、セクハラ、パワハラなど様々な種類が存在します。しかも、受け止め方が人によって異なり、また、ハラスメント自体の概念も少しずつ変化していきます。

    こうしたハラスメントの問題に対応するためには、ハラスメントついての深い理解と対応の経験が必要になります。当然、人事だけでは対応できませんし、そのような人材を企業が常に抱えることには無理があります。だからこそ外部の専門家の協力が必要になります。

    こうした外部の専門家による相談窓口を設けることは、社員にとってコミュニケーションのルートが一つ増えることになると前向きにとらえるべきです。
    一方で、単に窓口を設けるだけでうまくいく訳ではありません。

    例えば内部通報制度の特徴として、「匿名性」が挙げられますが、こればかりが強調されると、不満や他人への誹謗中傷ばかりが寄せられて、いわゆる“ガス抜きの場”になってしまいます。これでは本来の役割を果たせません。外部にも窓口があることで顕名での通報がしやすくなり、寄せられた通報に対しての適切な調査やフィードバックも可能となり、より健全な制度となることができるのではないでしょうか。

    なぜ内部通報の窓口が設けられているのか、どんな内容の通報を期待しているのか、通報者がどのように保護されるのかなど、内部通報制度の趣旨をもっと丁寧に啓発する必要があると感じています。

    新しい制度だけに、極端に振れることもあるかもしれませんが、内部通報窓口の設置は社員が安心して働ける会社を作るための土台です。例えば、この制度によってセクハラが起きにくい環境が整えば、男女問わず安心して働ける職場となって、結果的に女性も活躍できる企業としての評価が高まり、優秀な人材も集まってくるはずです。

    内部通報制度について冷静に捉え、長い目で見た成果を期待して欲しいと思いますね。

     

    第三者通報窓口サービス「DQヘルプライン」のご紹介

    ディー・クエストでは、従業員等からの通報を第三者の立場で受付してご報告する第三者通報窓口サービス「DQヘルプライン」を提供しております。
    「従業員の声」「現場の声」を積極的に収集できる仕組みの提供を通じて、問題や事故などの未然防止・早期対応・被害最小化を支援いたします。

     

    参考資料

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