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<連載>日本電産の元CFOが教える、コロナ危機を乗り越える秘訣④―企業経営者のみならず、管理職や中堅社員、若手社員、全てのビジネスパーソンに送るアドバイス

2021.02.24

 2020年は、コロナで「新しい生活様式」の実践が求められる中、ビジネススタイルも劇的に変化した。時差出勤やテレワークだけではなく、取引先との打ち合わせもオンラインで行うことが当たり前になってきた。2021年もこの状況は続きそうだ
 ※インタビュー・撮影は、感染対策を行った上で2020年12月末に都内の弊社本社会議室で行いました。

吉松加雄氏:コロナ前から、日本企業は相対的にDX(デジタルトランスフォーメーション)と働き方改革が遅れていると言われてきましたが、一方で、ディスラプション(破壊的イノベーション)を変革の機会と捉え、機動的な経営戦略の立案と実行により柔軟性とレジリエンス(困難や逆境への適応力)を兼ね備えた経営を模索してきた企業も多かったと思います。コロナ禍という環境激変により、これから、DXと働き方改革を加速させる過程で、例えば経理領域ではリモートワークやリモート決算の拡大と同時に、内部統制の効率化、高度化の実現といったことが企業経営者、CFO、経理部長の課題になっていくと思います。

―菅政権はデジタル庁(仮称)の創設を打ち出し、河野行政改革担当相はハンコの廃止を呼び掛けて中央省庁でもようやくDXが進みそうです。民間では官に先駆けて対応を始めていますね。

吉松氏:フォロワーズアドバンテージ(後発者利益)という考え方があります。追いかけている方が最新鋭のシステムやプロセスを導入できるので、一気に先頭に立てるという考え方です。例えば日本企業では、欧米のグローバル企業が採用しているリモート決算という考え方は少なかったと思いますが、コロナ禍を機に導入しようという取り組みも広がっています。遅れていた状態から、最新のシステムやプロセスを導入する絶好の機会です。イノベーションのトレンドも踏まえて、ベストな解(ソリューション)を導入する良いチャンスだと思います。中小企業も含めて改革が遅れている会社にとっては、等しくフォロワーズアドバンテージがあると思います。

―大企業のCFOを務めてこられたお立場から、中小企業含めてすべてのビジネスパーソンにアドバイスを。

吉松氏:私がこれまでCFOとして心がけてきた3SGIがご参考になるかもしれません。

3Sは、感性(Sensitivity)を高め、課題の本質(Substance)を捉え、スピード(Speed)解決を図ることです。
3Gは、グループ・グローバル・ガバナンスの視点を持つことです。(第三回記事参照
3Iは、欧米のプロフェッショナルの共感も得た価値観なのですが、Integrity(高潔・真摯・誠実)、Inspiration(ひらめき・鼓舞)、Innovation(イノベーション)です。

コロナ危機に直面して経営者が一番悩み、3Sに腐心されていると思います。この危機のなかで、企業変革のビジョンや目標をどのように従業員に伝えて共感を得るか、いかに組織全体に周知徹底して行動に結びつけていくか。起点となるコミュニケーションは、これまでの全員出社を前提とした階層型組織における段階的なプロセスから、リモートワークも進む今日、変化と改革が求められていると思います。例えば、全員が一堂に会するオンライン会議を利用してリーダーが全社員に直接語りかけながら新たな方向を示す。そして、オープンでフランクな双方向のコミュニケーションを経て全員一丸となって目標に向かうことが可能になると思います。

―コンセンサスをとるのが一度ですみますね。

吉松氏:おっしゃる通りです。また同時に、メンバーシップ型(終身)雇用からジョブ型(職務型)雇用への移行過程で、業務効率向上のため階層型組織からフラットな組織に変わっていくと思います。この改革の流れは管理職ポジションの削減にもつながり得ますから、ジョブセキュリティーの不安が起きないように、ジョブ型雇用への移行に際し社員のスキル向上のためのトレーニングが重要になると思います。経営者と経営幹部には、全体最適の企業変革をスムーズに推進する変革時のリーダーシップも求められてゆくと思います。

 吉松氏は、東京都立大学大学院の経営学研究科(主に社会人対象のビジネススクール)で「事業リスクマネジメント」の講義を担当している。2020年度の受講者は前年度の約3倍となり、大企業の経営幹部や若手のプロフェッショナルなどの聴講が増えたという

吉松氏:最近、リスクマネジメントに対する関心が一段と高まっているのを感じています。企業経営者や管理職、若手の社員も同じようにインパクトを受けていますが、受講生と話し合っていることの一つはダーウィンの「適者生存」関連の言葉と言われている、『最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である』です。環境に適応できる生物が生き延びる適者生存。ですから、コロナ禍の状況を踏まえて柔軟に対応していかなければいけないと思います。そのためには、経営をジェット機の運航に例えるならば、突如コロナ危機という「大乱気流」に突入した中で、経営環境である「航路の状況」と自分たちの会社である「機体」の状況を即座にきちっと把握した上で、環境激変に即応しいかに早く乱気流を乗り越えて通常の航路に戻るかを示す。それはまさに経営のナビゲーションになりますが、そういう役割がCFOには求められていると思います。

―このコロナ禍で、企業が生き延びるにはどうしたらいいでしょうか。

吉松氏:年末年始のコロナの第三波、現在のウィズコロナの状態からポストコロナのニューノーマルに向けて、パラダイムシフトが起こるだろうと多くの人が感じていますが、それがどういう形で起きるのかは時間軸も含めてまだ明確には描けていないと思います。今後の環境変化に対応して我々も変化していくには、柔軟性とスピードが重要になります。

日本電産では、常に全役員が「経営は結果がすべて、経営は数値管理、経営はリスク管理」と確認しあっていました。これからも様々なリスク事象が生じてくると思いますが、それらに遭遇したときに慌てずに対応できるように、即座に業績のシミュレーション(数値予測)を行い、ナビゲーションできるような仕組みと、対策を設けておくことだと思います。リーマン・ショックの時に日本電産が行った給与カット(第二回記事参照)は、最もドラスティックな対策だったと思いますが、リスク事象の度合いによってどういう対策を講じるのかをしっかり考えて、何通りか準備しておくことが大切だと思います。

 リーマン・ショックや主力製品の生産拠点があるタイの洪水など度重なる危機を乗り越え、日本電産を飛躍的な成長に導いてきた吉松加雄氏が語る、コロナ危機を乗り越える秘訣。
これまでの記事は、下記リンクよりご覧いただけます

株式会社CFOサポート
代表取締役社長兼CEO
吉松 加雄
よしまつ ますお

慶応義塾大学経済学部卒、スタンフォード大学経営大学院修了。三菱電機株式会社のイギリス、シンガポール、アメリカの現地法人、サン・マイクロシステムズ日本法人、エスエス製薬株式会社等のCFOを歴任。2008年日本電産株式会社に入社後10年間常勤役員、うち2009年より7年間取締役常務/専務執行役員兼CFOを務めた。米金融専門誌Institutional Investor誌のCFOランキングで電子部品セクターのベストCFOに2013年から4年連続選出。62歳。

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