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内部通報

公益通報者保護法 改正をオリンパス内部通報者 濱田氏に聞く<全5回>

2021.09.03

オリンパス元社員の濱田 正晴氏は在職時、上司の不正行為を内部通報したところ会社や上司から様々な嫌がらせを受け、「公益通報者保護法」(2006年施行)がカバーしきれなかった“通報者保護”を身をもって体験した。公益通報者保護法の欠点を痛感した濱田氏は、裁判を通して得た知見を記者会見など様々な場所で発信し続け、その想いは遂に国を動かすことになった。公益通報者保護法の改正にあたり、法を管轄する消費者庁は繰り返し濱田氏に意見を求め、改正法の成立・公布直前には司法の専門家と共に参考人として参議院特別委員会に出席し意見を述べている。

国民生活の安全安心を脅かす事業者の法令違反行為を防ぎ被害防止を図る観点で施行された公益通報者保護法だが、企業の不祥事は後を絶たないうえ、通報者の解雇などの不利益な取り扱いが大きな問題になってきた。改正公益通報者保護法では、通報者に関する情報を漏洩した者には刑事罰が科されるなど、事業者が認識しておくべき大きな変更点が複数ある。
連載第2回は、2022年6月に施行される改正公益通報者保護法のポイントについて濱田氏の見解を聞いた。

「公益通報」は世間が思っているものとは違う

濱田 氏:事業者も従業員も、まず公益通報とは何なのかを理解しなければなりません。ビジネスパーソンが、自分が通報すべきだと考えている事柄は全て公益的なものだと思うのは当たり前だと思います。ところが法律上は、指定されている犯罪行為以外は公益通報ではない、と決まっている。そこに世間の常識と公益通報者保護法とのギャップがあるので、まずそこをちゃんと理解しないといけないと思います。公益通報というのは世間が思っているようなものじゃないんです。

「犯罪行為」を言わないと公益通報にならない

Q : 改正法のもとでも、濱田さんが通報した内容は公益通報には該当しないのですよね?

濱田 氏:私は今でも、自分の通報は公益通報にあたるとおもっています。ただここで押さえないといけないポイントは、「行為」を言わなければいけない。法律名だけではだめなんです。
私の場合は、「他社の機密情報を持つ社員を立て続けにオリンパスに引き抜いて営業に使う」という行為を内部通報しました。しかし「不正競争防止法違反に該当する行為だ」と書かれたメールがない、明確に言った形跡がないということで、裁判では「公益通報とは違う」とされました。ということは、このような証拠まで残さないと公益通報にはならないわけです。

公益通報にするためには「犯罪行為を想像して残す」

濱田 氏:職場への内部通報が公益通報となって通報者が保護されるには、「通報対象事実が生じ、又は生じようとしていると思料(しりょう)する場合」という要件を満たしていなくてはなりません。「思料=色々と考えること」、それから犯罪行為。要するに内部通報者は犯罪行為の予言者になれということなんです。「こういったことが恐らく将来起きようとしている」。それを書き残せと言っているんです。なかなか難しいことだと思います。このことは8年間、消費者庁と最初の段階から徹底的に話していますし、我々は言い疲れています。しかしまだ言い続けています。最近は進めながら考えるしかないと思っているんです。

私は、通報者が犯罪行為を言うためには教育が必要だと思います。「なんでもいいから想像してメールや書面に残しなさい、そうすれば公益通報になるから」と伝えていかなければならないと思っています。

事業者の内部通報窓口に通報する公益通報の定義

通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合 当該役務提供先等に対する公益通報(出典:e-Gov法令検索 改正公益通報者保護法 第三条第一項)
通報対象事実とは、対象となる法律(及びこれに基づく命令)に違反する犯罪行為又は最終的に刑罰につながる行為のこと(出典:公益通報ハンドブック)

濱田 氏:私がいつも使う例を紹介します。
路上で棒を振り回している人がいたら「まさにこの人が銀行強盗をしようとしているんです」と通報すればいい。なんでもいいからあなたが想像することを言えば公益通報になります。想像があたっていなくても、この状況自体を公益通報の定義にできます。

「不利益な取り扱い」にも課題

公益通報者保護法では、公益通報を理由として通報者を解雇したり、降格、減給、退職の強要などの不利益な取り扱いが禁止されています。

Q : 通報者が不利益な取り扱いをされたと思ったらやはり裁判に訴えるしかないのでしょうか?

濱田 氏:訴えるしかないですね。逆にそれを勝手に第三者委員会とかで判定した時に、その判定が間違いだったらどうするんですか、と。司法の判断というところに軸を置くしかありません。確定判決でなくても和解するとか、労働審判に訴える手もあります。いずれにしても司法判断に頼らないとそれが本当に不利益取り扱いかどうか認定できない我が国の事情があります。

改正公益通報者保護法について

Q : 改正公益通報者保護法では、通報者の情報を漏洩した担当者に刑事罰が科されることになったが、事業者に罰則がないことについてはどう思いますか?

濱田 氏:仕方ないのではないでしょうか。無断漏洩をしたら企業に刑事罰を科す段階までいくと運営が成り立たないと思います。このくらいが丁度良いと思っています。たとえ「無断漏洩したら会社に刑事罰を科す」となっても、漏洩した担当者に刑事罰が科されなければ、何も変わりはしないでしょう。ただ、担当者が懲戒処分になるというのは会社側の責任です。
会社が内部通報業務の担当者にきちんと法律や内部通報制度を理解させ、手当を増やすなど様々なことを考えて人を育てていかなければ誰もやりませんよ。そういう人材を育てていく意味でも改正法の罰則はちょうどよいのではないでしょうか。

「通報しても何も変わらない」と思わせてしまう企業文化が課題

Q : 改正法では行政機関や報道機関などへの通報をしやすくすることにより、事業者にしっかりとした内部通報制度を作らせ自浄作用を高めようという狙いがあるとされていますが、本当に自浄作用は高まると思いますか?

濱田 氏:高まらないと思います。日本の企業文化がそうさせない。極めて高い挑戦だと思います。会社は組織を守るわけですから、通報者を守るなんて普通は考えられないというのが定着していると思うんです。
実現するには、ちゃんと通報内容を調査できるのか、是正できるのか、をメッセージ以上のもので従業員に浸透させることが必要です。「私が通報しても何も変わりはしない」という思いが文化としてあるんですよ。
また、改正法でも人事部に内部通報窓口を置いてもいいということになっています。「人事部とコンプライアンス室とは通じている」、「わざわざ人事に目を付けられる事はしたくない」というのが日本のビジネスパーソンの考え方ではないでしょうか。もちろんそうではない企業もあると思いますが、今のやり方の延長では、組織の自浄作用が働くには時間がかかると言った方が正解かもしれません。

改正法の有用性は消費者庁の運用次第

Q : “欠陥法律”と言われていた公益通報者保護法ですが、法改正により改善されたと思いますか?

濱田 氏:法律上は大きく改善されたと思います。あとは消費者庁がちゃんと罰則を科し、状況確認をしていかないと。法律がきちんとしていても、行政が行動する仕組みをしっかり作らないと何も変わらないと思います。

Q : 消費者庁が法律をどう運用するか次第だということですね。

濱田 氏:そうです。本当に消費者庁が来るんだぞということを指針のなかで明確にすべきです。「本当に消費者庁が行くんですね?」と尋ねたら「管轄ですから様々な状況を判断してそういうこともあります」という答えでした。

先日、消費者庁の企画官とオンライン会議で話しましたが、また「部署が変わるからありがとうございました」って、事務的で(笑)。「何をどうやって引き継いだんですか?」と。そういう事がないままでは、改正法が施行されて企業の経営者や従業員が一生懸命やっても響かないでしょう。


濱田 正晴
はまだ まさはる

濱田正晴氏は1985年にオリンパスに入社し、開発、営業、マーケティング等の業務に従事してきた。営業の仕事に邁進していた頃、当時の上司が取引先重要顧客である大手製鋼メーカーの独自技術を知る営業社員を立て続けにオリンパスに引き抜こうとしているのを目の当たりにし、2007年に同社のコンプライアンス室に内部通報した。ところがコンプライアンス室の担当者は、濱田さんが内部通報したことを上司に漏洩。さらに会社としても濱田さんを専門外の部署に異動させる、社内の人間関係から孤立させる、最低の人事評価を与える、密室で大声で叱責するパワハラなど、数々の不利益な取り扱いを行った。濱田氏は2008年2月に配転命令の無効と損害賠償を求めて提訴したほか、東京弁護士会に人権救済を申し立てるなどしてオリンパスと闘ってきた。不当な人事や名誉の回復を求める訴訟も含めた8年間に及ぶ裁判の末、2016年2月にオリンパスと和解した。
内部通報をした経緯は、著書「オリンパスの闇と闘い続けて 浜田正晴 光文社(2012年)」で詳しく解説されている。2021年3月にオリンパスを退職し、現在は自身の経験を糧に改正公益通報者保護法や内部通報制度に関するセミナーなどで講演するほか、アドバイザー業務も行っている。

濱田氏ブログ: https://ameblo.jp/jpmax/

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