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公益通報者保護法改正、企業の準備は?オリンパス内部通報者 濱田氏に聞く<全5回>

2021.09.08

オリンパス元社員の濱田 正晴氏は、上司の不正行為を内部通報し報復人事など様々な嫌がらせを受けてオリンパスと裁判で闘ってきた。2022年6月に施行される改正公益通報者保護法や企業の内部通報制度のあり方、経営陣が持つべき姿勢などについて濱田氏の経験に基づく分析や考えを聞く連載。第3回は、実効性のある内部通報制度を構築するために必要な会社側の姿勢について取り上げる。

内部通報制度とは

内部通報制度とは、事業者が組織内の法令違反やそれにつながる行為をできるだけ早く発見し、未然に防ぐまたは是正措置をとるために従業員等から通報を受けて調査する仕組みのことをいう。所定の要件を満たせば事業者への内部通報は公益通報となるほか、行政機関や報道機関等に通報する、いわゆる“内部告発”も場合によっては公益通報となる。内部通報制度の実効性を担保するには、事業者が内部通報と内部告発の違いや公益通報の定義をしっかり理解することが必要になる。
また、公益通報者保護法の改正法では、従業員が301人以上の企業に対して通報窓口の設定や調査、是正措置などの内部通報制度の体制整備が義務付けられる。

公益通報をしようと考えた通報者は3か所に通報できる。どれか1か所に通報してもいいし、3か所全てに通報してもよい。但し通報者が不利益な取扱いを受けないよう法律に基づいて保護されるためには、決められた条件(保護要件)を満たしていなくてはならない。
 ① 事業者内部への通報(内部通報)
 ② 管轄の行政機関への通報(内部告発)
 ③ 報道機関や労働組合などへの通報(内部告発)

改正法への準備は、従来のハラスメント相談窓口を脱皮することから

Q : 改正法施行に向けて、企業はどうしたらいいでしょうか?

濱田 氏:従来のパワハラやセクハラの相談窓口から脱皮しなければなりません。「内部通報で問題解決ができる」、「自分が勤めている会社を守る唯一の方法は内部通報です」と内部通報しやすくする企業風土を作らなければなりません。
法律のたてつけからすると、原則、課長以上( 企業側の管理職 )であれば全員通報を受ける窓口担当者と定義されています。会社にコンプライアンス室がなくても管理職は全部窓口担当者になる可能性があるのです。そこにいかないように配慮もしつつ、内部通報を受け付ける窓口を作ることです。社員に対して「とにかく相談があったら上司に内部通報するよりも、こちらの窓口に通報してください」という初歩的な通報窓口の整備をまずはやるべきです。改正法施行までにやっておかないと、内部通報体制の整備が努力義務に留まっている従業員300人以下の企業でも、いつ301人以上の義務の状態になるかわかりませんから。

大企業は相談の切り分けを、中小企業はまず窓口設置を

事業者が内部通報窓口を設ける時、コンプライアンス室を設置したり、総務部や人事部を窓口とすることもできます。また、外部の弁護士事務所や専門業者に内部通報の窓口業務を委託し、従業員等からの通報を受けることもできます。

濱田 氏:大企業で内部通報制度をしっかりと行うには、さきほど申し上げた通り今までの相談窓口から脱皮しなければいけません。公益通報と従来のパワハラやセクハラなどの相談をどのように分けてマネジメントしていくか。場合によっては「これは公益通報ではありませんから内部通報窓口では受け付けません」というようなことも言っていく。今までの相談を全くシャットアウトするわけにはいかないので、「内部通報の相談窓口では、名前を言ってもらわないと総務も人事も動けません」などと切り分けることが大企業には必要だと思います。

Q : 中小企業はどうしたらよいでしょうか?

濱田 氏:従業員が300人以下の企業はとりあえず窓口を作っておく。そのくらいの努力はすべきでしょう。専門的な知識と実務経験を持つ人と一緒に窓口を運営するとか、方法はあると思います。

Q : 弁護士事務所に窓口業務を委託する場合にはどんなメリットとデメリットはあるでしょうか?

濱田 氏:外部の弁護士では内部通報を受けても調査に参加できません。形だけ置くことはできますが現実的ではないでしょう。メリットを言うとしたら「外部にも通報窓口がありますから、うちの体制は万全です」と言えます。

Q : 弊社のように、内部通報窓口業務を受託する専門企業の場合はどうですか?

濱田 氏:皆さんもビジネスをしてるから、ビジネスパーソンの気持ちがわかりますよね。弁護士とは異なるという意味では、専門業者と組んで内部通報窓口を運営するメリットはあると思います。しかし、どのように情報を秘匿しながら調査するかという課題はあります。一線を画しながらも連携することが必要です。両者が連携しないことには調査できないのは当然ですから。

Q : 海外に支社や工場を持っている企業では、グローバルな通報に対応するために、自社か弁護士事務所か、あるいはグローバル通報にも対応できる業者に頼むか、選択肢が出てきますね。

濱田 氏:そうですね。グローバル通報に対応するとなると、例えばアメリカなどでは、「通報したんだから報奨金を出せ」という人もいると思います。そのような各国の特性にも対応できるような調整力が必要と考えると、いわゆる通報窓口を業務として提供しているところは非常にビジネスチャンスがあると思いますね。

管理職・経営者が法律を理解し従業員と対話する

濱田 氏:公益通報者保護法 改正への対応は、管理職と経営者の自覚、そしてFace to Faceで社員と話すということが重要です。まず経営者と管理職は徹底的に公益通報者保護法(改正法)を勉強するべきです。逐条解説まで踏み込んだ厳しいテストを受けて合格するまで理解が必要だと思います。
そして経営者が顔を見せて、表面上ではなくて深いところの訴える力をもって従業員に話をすることが大事だと思います。なぜかというと、オリンパスでもコンプライアンス関連メッセージが来るだけで、公益通報者保護法に対して経営のトップが真剣に話をしているのを見たことがなかったですから。見たことがないものを普通の従業員が「本気じゃないんだな」と思うのはごく自然ですからね。トップ自らが部署を回って行うくらいの本気さが必要だと思います。

経営者の本気度を示して信頼関係を築く

濱田 氏:内部通報を行っても「会社は変なことをしないから」というところを従業員に分かってもらうことが大事です。従業員が一番恐れているのは、「通報したら何かされるんじゃないか」というのがどうしてもありますから。

Q : ちゃんとした通報してくれたんだから「ありがとう」、「変なことはしないから大丈夫、安心して」というトップと従業員との信頼関係を醸成することが大事だということですね?

濱田 氏:そうです。その上で信頼関係のためには、経営者の立場ではっきりと言っていい言葉もあると思うんですよ。正当な理由のない通報や誰かを傷つけることを目的とする通報はもとより、行政機関及び報道機関への通報(内部告発)を行う際の機密情報の持ち出しは、労働法などの法律や就業規則の中で「懲戒もあり得る」としっかり伝えるべきです。

Q : 従業員に「勤務する会社の悪い行為は悪いと言ってほしい」と求めるのは酷なことですか?

濱田 氏:経営者から発信するのは全然構わないと思います。そのために紙とかネットではなくて、本気度を示すやり方でないといけないのです。

オリンパス内部通報者の濱田正晴氏に内部通報制度や公益通報者保護法について聞く連載。全5回で掲載します。


濱田 正晴
はまだ まさはる

濱田正晴氏は1985年にオリンパスに入社し、開発、営業、マーケティング等の業務に従事してきた。営業の仕事に邁進していた頃、当時の上司が取引先重要顧客である大手製鋼メーカーの独自技術を知る営業社員を立て続けにオリンパスに引き抜こうとしているのを目の当たりにし、2007年に同社のコンプライアンス室に内部通報した。ところがコンプライアンス室の担当者は、濱田さんが内部通報したことを上司に漏洩。さらに会社としても濱田さんを専門外の部署に異動させる、社内の人間関係から孤立させる、最低の人事評価を与える、密室で大声で叱責するパワハラなど、数々の不利益な取り扱いを行った。濱田氏は2008年2月に配転命令の無効と損害賠償を求めて提訴したほか、東京弁護士会に人権救済を申し立てるなどしてオリンパスと闘ってきた。不当な人事や名誉の回復を求める訴訟も含めた8年間に及ぶ裁判の末、2016年2月にオリンパスと和解した。
内部通報をした経緯は、著書「オリンパスの闇と闘い続けて 浜田正晴 光文社(2012年)」で詳しく解説されている。2021年3月にオリンパスを退職し、現在は自身の経験を糧に改正公益通報者保護法や内部通報制度に関するセミナーなどで講演するほか、アドバイザー業務も行っている。

濱田氏ブログ: https://ameblo.jp/jpmax/

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